趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

調べたいのは「考え」か「事実」か

「アンケート」ウォッチング 2024年2月21日 今回のネタはこちらです。 prtimes.jp 統計手法や可視化手法というより、結果の表現について検討してみたいと思います。 いつものように(いつもこのようであってほしくないのですが)、「インターネットのアンケ…

シグマくんのはなし #10

分散を計算しよう では、今回はシグマくんを使って「分散」を計算する、ということをしてみましょう。まずは、分散の定義式の確認からです。 分散の定義式 分散は、次の式で定義されています。 なかなか複雑ですね。もう少し簡単にするために、シグマくん的…

最小二乗法体験ゲーム

アニメーションによる統計学習 「数値シミュレーションで読み解く統計のしくみ」という本を読み進めています。 www.hanmoto.com 前回に続いて、相関係数のシミュレーションからヒントを得たものです。 最小二乗法を体験しよう 前回のゲームは、プロットから…

回帰直線当てはめゲーム

アニメーションによる統計学習 「数値シミュレーションで読み解く統計のしくみ」という本を読み進めています。 www.hanmoto.com 書籍で紹介されているシミュレーションを、Rで実行して見つつ、それを Javascript で書き換えて、なんとかアニメーションを作れ…

シグマくんのはなし #09

平均の意味について(シグマくんによる説明) 以前の記事で、平均の意味について今更っぽいお話を書きました。 almondfish.hatenablog.com この記事の中で、次の図を使っています。棒グラフの高さをデータの値とした時、平均値(赤い破線)を正しく定めると…

シグマくんのはなし #08

シグマくんの変身術 その3 その1では「分身の術」、その2では「エヌ隠れの術」について話してきました。3回目は、「まとめ掛けの術」について話していきます。「分配法則」といったほうがわかりやすいかもしれません。 では、設定です。 設定:5人の子ども…

シグマくんのはなし #07

シグマくんの変身術その2 前回はシグマくんの分身の術について書きました。今回は、シグマくんが変身して消えてしまう術、雲隠れ?ならぬ、「エヌ隠れの術」です。 変な名前ですか? いやあ、名前つけるの難しいですよね。シグマくんが消えて、代わりにnが…

シグマくんのはなし #06

シグマくんの変身術 では、今回から何回かに分けて、シグマくんの変身術についてお話しましょう。「シグマくん」は、とりあえず口に入れてもらった数たちを「合計する」というワザをもっているのですが、そのワザを効果的に使えるように、いくつか変身術をも…

シグマくんのはなし #05

前回、総和記号を使って平均を求めるという計算についてお話しました。ここで、平均の意味について少し確認をしておきたいと思います。なお、ここで扱うのは「算術平均」あるいは「相加平均」と呼ばれているものです。その他の平均(相乗平均または幾何平均…

シグマくんのはなし #04

友だち紹介「いちエヌくん」 今回は、総和記号「シグマくん」の仲の良い友達である「エヌぶんのいち」君を紹介しましょう。少々名前が長いので「いちエヌくん」と呼ぶことにしたいと思います。こういう見た目をしています。 なんだ分数じゃないか。 そうです…

シグマくんのはなし #03

出席番号は必要か 復習です。第1回では、総和記号「シグマくん」は、足し算の筆算と考えると分かりやすいと思うよ、という話をしました。そして第2回では、足す数がもっと増えてきたときのことなどを考えて、足す数たちの集まりに、名前を付けて、その名前を…

シグマくんのはなし #02

シグマくんは数を咀嚼して合計を答える さて、総和記号「シグマくん」のイメージが少しわかっていただいたと思いますので、ちょっと練習をしてみましょう。 まずノートに「シグマくん」を書いてください。少し大きめに書いていただくといいかと思います。そ…

シグマくんのはなし #01

総和記号のシグマくん 総和記号という記号をご存知でしょうか。 一般に数学の教科書ではシグマという文字で表されています。シグマというギリシャ文字をご存知でしょうか。ローマ字のMという字を左側にコテンと倒したような形をしています。ギザギザとした結…

標準偏差が書かれていないことの何が問題なのか

テストの平均点 小杉(2023)の中に、次のような注があります。 私の娘が通っていた中学校では,定期試験の結果を表にまとめたプリントを親に見せてくれるのですが,本人の素点と本人の平均点しか表示されておらず,まったく無意味な数値の羅列でした。(小…

どのように回答者を集めたらよいのだろう?

「アンケート」ウォッチング 2024年2月4日 今回のネタはこちらです。調査方法、とりわけサンプルの抽出について、考えてみようと思います。 ecnomikata.com この記事は、2024年問題について何らかの意見を述べるものではありません。 新聞広告という媒体 こ…

世の中はグレーでできている

「アンケート」ウォッチング 2024年2月2日 今回のネタはこちらです。 www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp 政治的な意思決定にかかわるアンケートはあまり取り上げたくないのですが、この調査は、設問の提示の仕方、中立選択肢の有無といった、興味深い話題に…

何のためにグラフを描くのか

「アンケート」ウォッチング 2024年1月31日 今回のネタはこちらです。 jdsa-net.org これを見ながら、グラフ表現、とりわけ円グラフについて少し考えてみたいと思います。 色を分けるのはなぜか 2つ目のグラフ「【マイボトルを使用している方に伺います】マ…

モンテカルロシミュレーション

アニメーションによる統計学習 サイコロシミュレーションに続いて、モンテカルロシミュレーションツールを作成しました。 www.hanmoto.com この本の3章、3.1.4節に、正規分布曲線の±1.96σ内の面積を、ランダムプロットを用いて推定するコードが示されていま…

比較的きれいな記述統計の事例

「アンケート」ウォッチング 2024年1月28日 今回のネタはこちらです。 prtimes.jp 「成人の実感」というのが具体的にどのような感覚なのか、とても興味があります。 調査概要 記事の末尾あたりに調査概要があります。少々珍しいと思うのは、「調査方法」のと…

サイコロのシミュレーション その3

アニメーションによる統計学習 このところサイコロシミュレーションのことばかり書いていますが、前回(というか本日の午前中に)書いた記事で紹介したシミュレーションに、「目によって出る確率が異なるサイコロ」をシミュレートできる機能をつけてみました…

サイコロシミュレーションその2

アニメーションによる統計学習 前回、サイコロシミュレーションについて紹介しました。今回は、同じくサイコロシミュレーションのより単純なバージョンについて紹介します。 サイコロを1個振る、目を記録する、またサイコロを1個振る、目を記録する、、、と…

サイコロシミュレーション

アニメーションによる統計学習 前の記事で、アニメーションによる統計学習について書いています。 almondfish.hatenablog.com ここでちょっとだけ紹介していた「サイコロシミュレーション」をアップデートしました。 サイコロシミュレーション 試作品2 almon…

アニメーションによる統計学習

シミュレーションによる統計学習 しばらく放っておいた書籍をやっとちゃんと読み出しました。 www.hanmoto.com たとえば、大数の法則とか、中心極限定理とか、統計学には難し気な名前の法則やら定理やらが出てきますが、実際に乱数を発生させてシミュレーシ…

小塩先生の統計学講義を書籍で

読書の記録 紹介する本(たち)はこちらです。著者は小塩真司(オシオ アツシ)先生、早稲田大学教授です。 www.hanmoto.com この本はシリーズの2作目で、1作目は「大学生ミライの統計的日常 : 確率・条件・仮説って? 小塩 真司(著/文) - 東京図書 | 版元ド…

分析方法を統合的に理解するために

統合的って? 分析方法の「統合的」理解という言い方は、私が考えたものではなく、南風原先生のご著書によっています。以下に書くのは、私なりの敷衍です。南風原先生の名著はこちら。 www.hanmoto.com 仮想データの分析 仮想データを分析しながら、「統合的…

「非対称な3件法」にはどんな意図があるのか

「アンケート」ウォッチング 2024年1月10日 今回のネタはこちらです。記事冒頭を見て「なにこれ!」と驚いてください。調査方法が完全にナゾです。早く気づいて編集し直していただきたいですね。 kyodonewsprwire.jp 個人の態度や意見をどのように問うか こ…

「複数回答」集計の落とし穴

「アンケート」ウォッチング 2024年1月9日 今回のネタはこちらです。格安SIMへの乗り換えに満足している人が多くて、その理由の第一位は「料金」だよ! という、「当たり前やん!」という感じの調査です。 でも、「複数回答」をどう集計するのかについて、と…

この頃の読書記録

この頃書いた note の記事(読書の記録)をこちらでも残しておきます。 今を生きるための現代詩 渡邊 十絲子(著/文) - 講談社 | 版元ドットコム 現代詩について書かれた本ですが、終わりの方に書かれていた安美錦関のエピソードに心惹かれて、その意味につい…

犬を飼うことが認知症リスクを下げる可能性について

めずらしく論文紹介です 東京都健康長寿医療センターのプレスリリースで、「犬の飼育を通じた運動習慣や社会との繋がりにより認知症の発症リスクが低下することが初めて明らかに」なったということです。どんな「アンケート」とったの? といったん疑ってか…

分散公式から学んだこと(4)

前回まで 第1回では、分散定義式から分散公式が本当に導けるのか?について、学び始めの頃に感じていた疑問について書きました。 第2回では、観測値の合計と平均値のn倍が一致する、という、言われてみれば当然の式変換を使うと、ちゃんと分散公式が導ける…