趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧

シグマくんのはなし #20

設定の復習 2つの学習センターA、Bで、面接授業を受講していた学生10人ずつに、今学期の受講単位数をたずねたところ、次のようになりました。20人全体の平均は7.3でした。 では、前回の最後に示した手順に沿って、計算していきましょう。 平均が同じだった…

シグマくんのはなし #19

ふたたび「意味がない」状況とは では、「意味がない」という状況について、分散分析が使えそうなデータを使って考えていきましょう。 注:話が難しくなりすぎないように、2つの平均値を比較する、という状況で考えます。通常、2つの平均値の差を検討する場…

シグマくんのはなし #18

分散分析は何を分析したいのか 分散分析の解明に先立って、いったい分散分析というのは何を分析しているのかについて、復習しておきましょう。すでに統計学の教科書で勉強された方はご存知でしょうが、 分散分析は、平均値の差が、統計的に有意であるかどう…

シグマくんのはなし #17

平均を丸めたら:続きの続き 前回までの式変形を復習しましょう。分身の術を使って、この形までたどり着きました。 では、3つのシグマくんを順にみていきましょう。まず3つ目から。 3つ目のシグマくんは「エヌがくれの術」 3つ目はこんな形をしていますね。 …

シグマくんのはなし #16

平均値を丸めると:つづき 平均値を丸めると、その(丸められた平均を使って計算された)分散は、本来の(正しい平均値を使って計算された)分散よりも、少しだけ大きな値になるようだ。というのが、前回の実験でわかったことでした。その大きさはどれくらい…

シグマくんのはなし #15

文中に挿入してあった表の数値が誤っていたのを修正しました。(2024.2.25) 平均値を丸めると 分散公式の展開を学ぶことは、分散分析の理解を助けることになるのではないか、と私は考えています。そのきっかけになるのが、前回の最後に示した問です。すなわ…

シグマくんのはなし #14

分散公式ができた これまで(#11~#13)分散の定義式を展開・整理して、分散公式を導く、というお話をしてきました。順に振り返ってみます。 #11:カッコを展開して分身の術を使いました #12:3つ目のシグマくんに、エヌがくれの術を使いました #13:3つ目の…

シグマくんのはなし #13

分散公式を導く:つづきのつづき 前回までで、分散公式を展開し、3つのシグマくんに分身させ、さらに、3つ目のシグマくんを、エヌがくれの術で簡単にしました。今回は、残った2つ目のシグマくんを、簡単な形に変形していきます。2つめのシグマくんはこんなで…

シグマくんのはなし #12

分散公式を導く:つづき 前回は、分散の定義式を展開し、シグマくん「分身の術」を使うところまでをお話しました。前回までの式変形を整理しておきましょう。 青い数字は平均値、赤い数字は展開の途中で出てきたもので、データの数値とは区別しましょう。 で…

シグマくんのはなし #11

分散公式を導く 前回は分散の定義式の話をしました。今回は、分散の定義式を展開して、分散公式を導く、ということをしてみます。どうしてわざわざ式の展開をするかというと、式の展開の中で、シグマくんの変身術が見事に生かされるのを目撃することができる…

調べたいのは「考え」か「事実」か

「アンケート」ウォッチング 2024年2月21日 今回のネタはこちらです。 prtimes.jp 統計手法や可視化手法というより、結果の表現について検討してみたいと思います。 いつものように(いつもこのようであってほしくないのですが)、「インターネットのアンケ…

シグマくんのはなし #10

分散を計算しよう では、今回はシグマくんを使って「分散」を計算する、ということをしてみましょう。まずは、分散の定義式の確認からです。 分散の定義式 分散は、次の式で定義されています。 なかなか複雑ですね。もう少し簡単にするために、シグマくん的…

最小二乗法体験ゲーム

アニメーションによる統計学習 「数値シミュレーションで読み解く統計のしくみ」という本を読み進めています。 www.hanmoto.com 前回に続いて、相関係数のシミュレーションからヒントを得たものです。 最小二乗法を体験しよう 前回のゲームは、プロットから…

回帰直線当てはめゲーム

アニメーションによる統計学習 「数値シミュレーションで読み解く統計のしくみ」という本を読み進めています。 www.hanmoto.com 書籍で紹介されているシミュレーションを、Rで実行して見つつ、それを Javascript で書き換えて、なんとかアニメーションを作れ…

シグマくんのはなし #09

平均の意味について(シグマくんによる説明) 以前の記事で、平均の意味について今更っぽいお話を書きました。 almondfish.hatenablog.com この記事の中で、次の図を使っています。棒グラフの高さをデータの値とした時、平均値(赤い破線)を正しく定めると…

シグマくんのはなし #08

シグマくんの変身術 その3 その1では「分身の術」、その2では「エヌ隠れの術」について話してきました。3回目は、「まとめ掛けの術」について話していきます。「分配法則」といったほうがわかりやすいかもしれません。 では、設定です。 設定:5人の子ども…

シグマくんのはなし #07

シグマくんの変身術その2 前回はシグマくんの分身の術について書きました。今回は、シグマくんが変身して消えてしまう術、雲隠れ?ならぬ、「エヌ隠れの術」です。 変な名前ですか? いやあ、名前つけるの難しいですよね。シグマくんが消えて、代わりにnが…

シグマくんのはなし #06

シグマくんの変身術 では、今回から何回かに分けて、シグマくんの変身術についてお話しましょう。「シグマくん」は、とりあえず口に入れてもらった数たちを「合計する」というワザをもっているのですが、そのワザを効果的に使えるように、いくつか変身術をも…

シグマくんのはなし #05

前回、総和記号を使って平均を求めるという計算についてお話しました。ここで、平均の意味について少し確認をしておきたいと思います。なお、ここで扱うのは「算術平均」あるいは「相加平均」と呼ばれているものです。その他の平均(相乗平均または幾何平均…

シグマくんのはなし #04

友だち紹介「いちエヌくん」 今回は、総和記号「シグマくん」の仲の良い友達である「エヌぶんのいち」君を紹介しましょう。少々名前が長いので「いちエヌくん」と呼ぶことにしたいと思います。こういう見た目をしています。 なんだ分数じゃないか。 そうです…

シグマくんのはなし #03

出席番号は必要か 復習です。第1回では、総和記号「シグマくん」は、足し算の筆算と考えると分かりやすいと思うよ、という話をしました。そして第2回では、足す数がもっと増えてきたときのことなどを考えて、足す数たちの集まりに、名前を付けて、その名前を…

シグマくんのはなし #02

シグマくんは数を咀嚼して合計を答える さて、総和記号「シグマくん」のイメージが少しわかっていただいたと思いますので、ちょっと練習をしてみましょう。 まずノートに「シグマくん」を書いてください。少し大きめに書いていただくといいかと思います。そ…

シグマくんのはなし #01

総和記号のシグマくん 総和記号という記号をご存知でしょうか。 一般に数学の教科書ではシグマという文字で表されています。シグマというギリシャ文字をご存知でしょうか。ローマ字のMという字を左側にコテンと倒したような形をしています。ギザギザとした結…

標準偏差が書かれていないことの何が問題なのか

テストの平均点 小杉(2023)の中に、次のような注があります。 私の娘が通っていた中学校では,定期試験の結果を表にまとめたプリントを親に見せてくれるのですが,本人の素点と本人の平均点しか表示されておらず,まったく無意味な数値の羅列でした。(小…

どのように回答者を集めたらよいのだろう?

「アンケート」ウォッチング 2024年2月4日 今回のネタはこちらです。調査方法、とりわけサンプルの抽出について、考えてみようと思います。 ecnomikata.com この記事は、2024年問題について何らかの意見を述べるものではありません。 新聞広告という媒体 こ…

世の中はグレーでできている

「アンケート」ウォッチング 2024年2月2日 今回のネタはこちらです。 www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp 政治的な意思決定にかかわるアンケートはあまり取り上げたくないのですが、この調査は、設問の提示の仕方、中立選択肢の有無といった、興味深い話題に…