趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

シグマくんのはなし #04

友だち紹介「いちエヌくん」

今回は、総和記号「シグマくん」の仲の良い友達である「エヌぶんのいち」君を紹介しましょう。少々名前が長いので「いちエヌくん」と呼ぶことにしたいと思います。こういう見た目をしています。

なんだ分数じゃないか。
そうです。要するに分数ですね。分母がn、分子が1の分数です。「いちエヌくん」についてもう少し詳しく話す前に、分数について少し復習をしたいと思います。「分数」というのをおそらく小学校で習ったと思いますが、大変苦手にしている方も多いんじゃないかと思います。分数得意!という方はスルーしてね。

復習「分数とは」

分数とは要するに割り算ですね。
「何かをいくつかに分ける」という計算があります。例えば2という数があってそれを5で割る。具体的な場面では、たとえば2本のジュースを5人で分けるわけです(そんなん、ジュース5本ないとケンカになりそうじゃん? と思った方は、コップに注いで分けることを考えてくださいね)。このとき、2 \div 5と割り算をするわけですが、これを、2を上(分子)に、5を下(分母)に書いて(\frac25)という風に書きます。読むときは分母を先に、「5ぶんの2」と読むので、「あれ、どっちを上に書くんだっけ」と小学校の頃に悩んでしまった方もおられるかもしれません。
これ、英語では上から順番に読むようです。英語での読み方は何通りかあるのですが、(たとえばここのサイトを参照)基本的には「分子から分母」の順で読みます。たとえば\frac23は、two over three と読んだりします。英語版 Wikipedia にも、「for example, one-half, eight-fifths, three-quarters」と例が示されています。2つめの「eight-fifths」は\frac85のことで、やはり分子(上)を先に読んでいますね。

上から順に読むから「いちエヌくん」

上から下に読むので、なんだ英語の方が分かりやすいじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれません。ついでに少し脱線すると、数式を記述するときにつかう \LaTeX(ラテック)という言語があるんですが、ここでも分数を書くのに「\frac 25」などと書きます。「frac」は、分数の英語「fraction」の頭文字で、その後に続く数字は、最初の数が分子、次の数が分母です。ですからこれは「\frac25」を表しています。
最初に私が、「エヌぶんのいち」くんのことを「いちエヌくん」と、「いち」と「エヌ」を入れ替えた形で紹介したのは、このような背景があるからなのですね。

割り算の記号について

さて、先ほど例に出しました2本のジュースを5人で分ける2÷5の計算が、\frac25という分数になるわけですが。実はこの「÷」という記号は、どの国でも通用するような記号ではありません。
この記事にも書いてありますが、割り算の記号としては、スラッシュ(/)を使うことのほうが一般的なのですね。Excelの数式を書いたことがある方は、2÷5という割り算を「2/5」と書くことをご存知でしょう。さきほど引用した Wikipedia にも、こんな解説があります。

simple fraction (examples: \frac12 and frac {17}{3}) consists of an integer numerator, displayed above a line (or before a slash like 1⁄2), and a non-zero integer denominator, displayed below (or after) that line.
(注:numerator=分子、demnominator=分母です。英語版 Wikipedia より)

分子は、横線の上に書くか、スラッシュの前に書く。分母は、横線の下に書くか、スラッシュの後に書く。そう書いてありますね。横線を使って書くと、ノートの1行を2つに分けて窮屈な感じしますが、スラッシュならそんなことはありませんよね。で、分子、スラッシュ、分母の順に書く。そうしておいて、このスラッシュを、数字が落ちないようにグーッと真横に直してやると、分子が上に、分母が下になりますから、見慣れた分数の形になりますね。

こんなことも、分数の理解の何かの助けになるのではないかと思って紹介しました。

「いちエヌくん」の仕事は、「シグマくん」といっしょに平均を出すこと

話を「いちエヌくん」に戻します。
分子の1はまあ良いとして、分母のnはいったいなあに? ということを確かめておきましょう。これは、以前お話したと思いますが、「シグマくん」の頭のところに書いてあったnのことです(足元には「i=1とか書くことになっている、という話をしましたね」)。で、このnは何だったかと言いますと、「シグマくん」が足す数の個数を表しているのでした。
「シグマくん」は、数の「集まり」を飲み込んで合計を出してくれます。そして、それを、いくつの数を足したかというその個数で割る、というのが「いちエヌくん」の仕事なのです。これはつまり平均を出しているわけですね。
くどいようですが解説します。
たとえばシグマ君が3つの数の集まり(2,6,7)を飲み込んだとすると、その合計の15という答えが返ってきます。今ここで、3つの数を足したのですから、「いちエヌくん」の分母のn3です。\frac 1nは、\frac 13として解釈されるのですね。最終的に、5という答えが返ってくるわけです。