趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

心理統計をもういちど

シグマくんのはなし #31

カイ二乗統計量の計算 前回までに、クロス表のカイ二乗統計量の計算について書いてきました。ちょっと復習しておきましょう。 今回は、この表を計算式に書き換えていきます。本来は、e を計算する手順も式に書き換えてみたいのですが、ちょっと難しそうな気…

シグマくんのはなし #30

散らばり具合、あるいは密集度 分散という指標の意味を表すのに、「データの散らばり具合」という言い方がよく使われます。英語表現の variance は一般的に「不一致」とか「変化」とかの意味で、dispersion も「解散」「消散」とかの意味で、どちらも数学で…

シグマくんのはなし #29

クロス表における「偏差」 今回は、クロス表における「偏差」について考えます。 最初に断っておくと、前回も書いたように、クロス表で「偏差」という言葉はほぼ使われません。が、以下に書くような性質は、データから平均値を引いた値としての「偏差」と近…

シグマくんのはなし #28

「期待値」ではなく「期待度数」のほうがいいかな? 前回、クロス表の期待値について書きました。1つだけ補足しますと、「期待値」ではなく「期待度数」と書いたほうが正確なのかもしれません。クロス表のセルに書かれている値は、何かを測定した「値」では…

シグマくんのはなし #27

2次元表に整理するということ 2次元の表にデータを整理する、という学習は、小学校の算数ですでに指導されていることです。たとえばこんな感じの表示について勉強するようです。(出版されている小学生用のドリルを参考にして、著者が作成した表です) これ…

シグマくんのはなし #26

たてよこシグマくんを分解しよう 前回の最初に呈示した式を再掲しましょう。 表の中に入っている数たちの総合計を求める式だったので、左辺もその記号()にしてあります。添え字が2つついているのは、一方が「何列目の数たちの仲間か」を示していて、もう一…

シグマくんのはなし #25

たてよこシグマくん 最後のパートでは、ひときわごつい、この形についてお話していきます。 なんですか、これは…思わず絶句しそうな方、どうぞお付き合いください。見た目がいっそうごついので、以下、しばらくの間は、これを「たてよこシグマくん」と呼んで…

シグマくんのはなし #24

平均値を選択する 以前から使用している設定を再掲します。 これを用いて、前回は、全平方和(を自由度で割った全分散)と、群内平方和(を自由度で割った郡内分散)について話しました。そこで、全平方和を割ったときの自由度が19であったのに対し、群内平…

シグマくんのはなし #23

設定の再確認 自由度の話をしたので、分散分析の話に戻りましょう。#19と#20で出した設定をもう一度復習します。そして、母集団と自由度も、確かめていきましょう。 母集団 この調査では、放送大学の2つの学習センターAとBで、面接授業に参加していた学生そ…

シグマくんのはなし #22

2種類の分散 自由度について話すために、まず分散には2種類ある、という話をしたいと思います。すでに学習された方はご存知でしょう。偏差の2乗の総和(=偏差平方和)を、(1) で割った分散、(2) で割った分散です。Excelの関数では、前者が var.p 関数、後…

シグマくんのはなし #21

自由度について書く前に 分散分析の話をちょっとだけ横に置いといて、自由度について書いてみます。この話、もっと早く出しておいた方がよかったと思います。それから、「分散」すなわち「偏差平方和の平均」という統計量をずっと扱っているのですが、nで割…

シグマくんのはなし #20

設定の復習 2つの学習センターA、Bで、面接授業を受講していた学生10人ずつに、今学期の受講単位数をたずねたところ、次のようになりました。20人全体の平均は7.3でした。 では、前回の最後に示した手順に沿って、計算していきましょう。 平均が同じだった…

シグマくんのはなし #19

ふたたび「意味がない」状況とは では、「意味がない」という状況について、分散分析が使えそうなデータを使って考えていきましょう。 注:話が難しくなりすぎないように、2つの平均値を比較する、という状況で考えます。通常、2つの平均値の差を検討する場…

シグマくんのはなし #18

分散分析は何を分析したいのか 分散分析の解明に先立って、いったい分散分析というのは何を分析しているのかについて、復習しておきましょう。すでに統計学の教科書で勉強された方はご存知でしょうが、 分散分析は、平均値の差が、統計的に有意であるかどう…

シグマくんのはなし #17

平均を丸めたら:続きの続き 前回までの式変形を復習しましょう。分身の術を使って、この形までたどり着きました。 では、3つのシグマくんを順にみていきましょう。まず3つ目から。 3つ目のシグマくんは「エヌがくれの術」 3つ目はこんな形をしていますね。 …

シグマくんのはなし #16

平均値を丸めると:つづき 平均値を丸めると、その(丸められた平均を使って計算された)分散は、本来の(正しい平均値を使って計算された)分散よりも、少しだけ大きな値になるようだ。というのが、前回の実験でわかったことでした。その大きさはどれくらい…

シグマくんのはなし #15

文中に挿入してあった表の数値が誤っていたのを修正しました。(2024.2.25) 平均値を丸めると 分散公式の展開を学ぶことは、分散分析の理解を助けることになるのではないか、と私は考えています。そのきっかけになるのが、前回の最後に示した問です。すなわ…

シグマくんのはなし #14

分散公式ができた これまで(#11~#13)分散の定義式を展開・整理して、分散公式を導く、というお話をしてきました。順に振り返ってみます。 #11:カッコを展開して分身の術を使いました #12:3つ目のシグマくんに、エヌがくれの術を使いました #13:3つ目の…

シグマくんのはなし #13

分散公式を導く:つづきのつづき 前回までで、分散公式を展開し、3つのシグマくんに分身させ、さらに、3つ目のシグマくんを、エヌがくれの術で簡単にしました。今回は、残った2つ目のシグマくんを、簡単な形に変形していきます。2つめのシグマくんはこんなで…

シグマくんのはなし #12

分散公式を導く:つづき 前回は、分散の定義式を展開し、シグマくん「分身の術」を使うところまでをお話しました。前回までの式変形を整理しておきましょう。 青い数字は平均値、赤い数字は展開の途中で出てきたもので、データの数値とは区別しましょう。 で…

シグマくんのはなし #11

分散公式を導く 前回は分散の定義式の話をしました。今回は、分散の定義式を展開して、分散公式を導く、ということをしてみます。どうしてわざわざ式の展開をするかというと、式の展開の中で、シグマくんの変身術が見事に生かされるのを目撃することができる…

シグマくんのはなし #10

分散を計算しよう では、今回はシグマくんを使って「分散」を計算する、ということをしてみましょう。まずは、分散の定義式の確認からです。 分散の定義式 分散は、次の式で定義されています。 なかなか複雑ですね。もう少し簡単にするために、シグマくん的…

シグマくんのはなし #09

平均の意味について(シグマくんによる説明) 以前の記事で、平均の意味について今更っぽいお話を書きました。 almondfish.hatenablog.com この記事の中で、次の図を使っています。棒グラフの高さをデータの値とした時、平均値(赤い破線)を正しく定めると…

シグマくんのはなし #08

シグマくんの変身術 その3 その1では「分身の術」、その2では「エヌ隠れの術」について話してきました。3回目は、「まとめ掛けの術」について話していきます。「分配法則」といったほうがわかりやすいかもしれません。 では、設定です。 設定:5人の子ども…

シグマくんのはなし #07

シグマくんの変身術その2 前回はシグマくんの分身の術について書きました。今回は、シグマくんが変身して消えてしまう術、雲隠れ?ならぬ、「エヌ隠れの術」です。 変な名前ですか? いやあ、名前つけるの難しいですよね。シグマくんが消えて、代わりにnが…

シグマくんのはなし #06

シグマくんの変身術 では、今回から何回かに分けて、シグマくんの変身術についてお話しましょう。「シグマくん」は、とりあえず口に入れてもらった数たちを「合計する」というワザをもっているのですが、そのワザを効果的に使えるように、いくつか変身術をも…

シグマくんのはなし #05

前回、総和記号を使って平均を求めるという計算についてお話しました。ここで、平均の意味について少し確認をしておきたいと思います。なお、ここで扱うのは「算術平均」あるいは「相加平均」と呼ばれているものです。その他の平均(相乗平均または幾何平均…

シグマくんのはなし #04

友だち紹介「いちエヌくん」 今回は、総和記号「シグマくん」の仲の良い友達である「エヌぶんのいち」君を紹介しましょう。少々名前が長いので「いちエヌくん」と呼ぶことにしたいと思います。こういう見た目をしています。 なんだ分数じゃないか。 そうです…

シグマくんのはなし #03

出席番号は必要か 復習です。第1回では、総和記号「シグマくん」は、足し算の筆算と考えると分かりやすいと思うよ、という話をしました。そして第2回では、足す数がもっと増えてきたときのことなどを考えて、足す数たちの集まりに、名前を付けて、その名前を…

シグマくんのはなし #02

シグマくんは数を咀嚼して合計を答える さて、総和記号「シグマくん」のイメージが少しわかっていただいたと思いますので、ちょっと練習をしてみましょう。 まずノートに「シグマくん」を書いてください。少し大きめに書いていただくといいかと思います。そ…