趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

犬を飼うことが認知症リスクを下げる可能性について

めずらしく論文紹介です

東京都健康長寿医療センターのプレスリリースで、「犬の飼育を通じた運動習慣や社会との繋がりにより認知症の発症リスクが低下することが初めて明らかに」なったということです。どんな「アンケート」とったの? といったん疑ってかかるのですが、「Preventive Medicine Reports」に掲載されたちゃんとした研究論文でした。リンクは記事末尾に記載しています。

分析方法は初めて聞いた方法で

プレスリリースから、概要の一部を引用すると、こんな感じです。

逆確率重み付け回帰分析によりペット飼育者の認知症発症リスクを調べた結果、犬非飼育者に対する飼育群の認知症発症オッズ比は0.60、猫非飼育者に対する飼育群のオッズ比は0.98でした。

ほらね、わからないでしょ(笑)。私もわからないのは冒頭の「逆確率重み付け回帰分析」で、回帰分析のちょっと特殊な奴かなあ~みたいな理解です(笑)。
でも、オッズ比はよく使われる指標ですので、統計検定受験しようなどと目論む方には、よい復習教材ですね。
オッズ比、私も苦手なんです、実は。結局、比率の比率、というふうにしか理解していないんですが。要するに、犬を飼っていない人の認知症発症リスクと、犬を飼っている人のそれを比較すると、犬を飼っている人の方が0.6倍だったよ(リスクが40%低かったよ)ということですね。
面白いのは猫の方の結果で、猫を飼っていてもそういう効果は見られない。うん。全国の愛猫家のみなさんには残念な結果かもしれませんね。

なんで犬を飼うことが認知症リスクと関係するのか?

これは、Voicy で oishi haru さんが考察されているのですが、犬を飼うと、毎日散歩をする必要があること、犬を散歩させていると、そういう人同士(つまり犬+飼い主の組合せで)立ち話をしたり、いつも集まる場所ができていたりする。結果として、運動習慣もできるし、社会的なつながりもできる。
なるほどの考察です。
なお、このことは論文でも指摘されていることです。論文の追加分析では、

  • 運動習慣を持つ人は認知症発症リスクが低下しているが、犬を飼っていて運動習慣がある人は、よりリスクが低くなっている。
  • 社会的に孤立していない人は認知小発症リスクが低下しているが、犬を飼っている人は、より低くなっている。

つまり、犬を飼うことで、「犬を飼ってないけど運動している」「犬を飼っていないけど社会的孤立していない」人たちよりも、より認知小発症リスクが低くなっている、ということのようです。
ん? ということは、小型犬を室内で飼っていて散歩に行かない、という生活の人は、認知小発症リスクの低下は期待できないということなのかな? 論文をぜんぶ読んでないのでわかりませんけど。興味のある方は読んでみてくださいね。

参考にした情報

oishi haru さんの voicy 、上記の話題について2024年1月7日に放送しておられます。
voicy.jp
研究成果を紹介しているNHKの記事。
www3.nhk.or.jp
プレスリリースはこちら。論文へのリンクもあります。
www.tmghig.jp