趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

「非対称な3件法」にはどんな意図があるのか

「アンケート」ウォッチング 2024年1月10日

今回のネタはこちらです。記事冒頭を見て「なにこれ!」と驚いてください。調査方法が完全にナゾです。早く気づいて編集し直していただきたいですね。
kyodonewsprwire.jp

個人の態度や意見をどのように問うか

この調査の最初の問いは、「地球温暖化問題に興味・関心はありますか?」です。この表現の通りに質問が記載されていたという理解でいいのでしょうか? はっきりわかりませんけどね。
さて、この設問のように、個人の態度や意見を問うのは、いろんなアンケートでよくみられることです。あなたは現在の政権を支持しますか、とか。**という施策は妥当だと思いますか、とか。具体例を出して議論するのが目的ではないのでやめておきますけど。
心理学的な概念(性格とか)を測定するときには、設問に対して、5件法(7件法)、あるいは4件法(6件法)で尋ねるのが普通です。つまり、「初対面の人に親しく接することができる」に対して、

  • とてもあてはまる
  • まああてはまる
  • どちらでもない
  • あまりあてはまらない
  • まったくあてはまらない

みたいな選択肢を用意して、どれかを選択してもらうのですね。これは5件法の例ですが、4件法では「どちらでもない」がありませんから、答えにくいと感じる人がいるかもしれません。
調査する立場としては、傾向がはっきり出やすいのであえて4件法にするという考えもあります。
7件法にすると、選択肢の表現が少し難しくなるので、あえて中間的な選択肢を書かずに、「とてもあてはまる(7)~どちらでもない(4)~まったくあてはまらない(1)」のように中央と両端だけ表現して、その中間は何も書かないという方法もあります。

「非対称な3件法」

さて、以上のことをお読みいただいたうえで、調査結果に戻っていただくと、選択肢が3つしかなく、さらに、選択肢の数が奇数であるにもかかわらず「どちらでもない」のような中間的な選択肢がないことに気づくと思います。結果を引用しましょう。

地球温暖化問題に興味・関心はありますか?
とてもある :178人
ある    :615人
まったくない:107人

なかなか興味深いですね。さて、これを見て考えたいのは、「うーん、温暖化問題かあ。ニュースで見たりはするけど、あんまり意識したことないなあ」という方が、どの選択肢を選ぶだろうなあ、ということです。
環境問題に関心がある、または、全く関心がない、という、態度が明確な人は、どの選択肢を選ぶか迷いませんね。「とても」とまではいかなくても関心がある人も、やはり迷いません。しかし、世の中には、そのような「はっきりした態度」をもっている人ばかりがいるのではありません。さきに示したような、「どっちつかず」や「あいまい」な態度や意見の人だっているのです。
「この際、態度をはっきり決めなさい」などと要求するのは無礼です。回答者はわざわざ時間をとって回答してくださるのですから。
であるなら、「曖昧な態度」「どっちつかずの態度」も、そのまま回答できるように選択肢を構成するのがよいのだろう、と私は考えます。その結果、「わからない」が多数派になるのであれば、「ああ、環境問題って、そもそもあんまり広まってないのかなあ」ということになります。その結果をどう使っていくかは、調査する側が考えることですね。

「ある」を多く見せたいという意図はあるか

「うーん、温暖化問題かあ。ニュースで見たりはするけど、あんまり意識したことないなあ」という方がどれを選ぶかといえば、やはり「ある」を選んでしまうのではないかと、私は考えます。
だって、少しでも環境問題のニュースに触れて、「ああ、環境問題って、やっぱり大事なのかなあ」とぼんやり思っているのに、「まったくない」を選ぶとは考えにくい。
ということは、「あいまい」「どっちつかず」の人たちも、できれば「ある」に含めて集計したいという意図があるのかな? 「ある」が多数派であることを見せたくて、こういう非対称な選択肢を使っているのかな、と私は推測したりします。
真実はわかりません。でも、そのような意図があるのだと見られてしまう可能性は高いような気がします。
もし、前述のような意図があって選択肢を工夫しているのなら、それは公正な調査とはいえないと考えます。