「アンケート」ウォッチング 2023年12月24日
今回のネタはこちらです。実際の調査結果ではなく、調査の方法がどのように結果に影響するか、について書かれた記事です。「どのような言葉で質問するか」は、回答に影響するということを前日の記事でも書きました。そのわかりやすい例だと思います。
www.j-cast.com
世論調査
新聞社などは、定期的に「世論調査」を行い、内閣支持率などを調べています。ところが、発表される内閣支持率は、メディアによって異なるのが普通です。最近では、岸田内閣の支持率の低下が話題になっていますね。(私は下記X投稿を2023年12月24日午前9時に閲覧しました)
内閣支持率・不支持率の平均
— 三春充希(はる)⭐第50回衆院選情報部 (@miraisyakai) 2023年12月19日
本日発表された選挙ドットコム・JX通信の世論調査を反映しました。内閣支持率の平均は21.0%、不支持率の平均は67.0%となっています。
表示できる範囲を一部の調査が超えたため、縦軸を15~75%にとりなおしました。 pic.twitter.com/91yiGm3vAV
この三春充希氏のグラフで、オレンジ色と青色の実線がそれぞれ支持率、不支持率を示していますが、これは各社調査の平均値です(算出方法は三春充希氏のサイトをご覧ください)。そして、その周辺に薄くプロットしてある点が、発表された支持率、不支持率です。調査主体によって、支持率が若干高めに出たり、低めに出たりするような「傾向」があることを、多くの方は知っていらっしゃると思います。また、記事の書き方にもそれは反映されている、ということも知られていると思います。
重ね聞きの有無
ところで、冒頭に紹介した記事では、それ以外にも要因があるのだ、といっています。引用します。
差が出る最大の要因は、「重ね聞き」をするかどうか。日経の場合、内閣支持を質問して「わかりません」と答えた人には、「お気持ちに近いのはどちらですか」と一度だけ重ねて質問する。読売もほぼ同じ。朝日や毎日は何も言わず、次に移る。
政権に対するスタンスの違いを否定して、「重ね聞き」の有無で違いが出るのだ、という見解ですね。なるほど。これ、どう思われますか?
「どちらでもない」という態度
話は一瞬変わりますが、心理学の調査で、質問文に対して「あてはまる~あてはまらない」で答えていただくものがあります。このとき、選択肢を5段階(あるいは7段階)にして、中央に「どちらでもない」を入れるか、それとも選択肢を4段階(あるいは6段階)にするかは、けっこう悩ましい問題です。
「答える人は”どちらでもない”を選びやすいから、偶数(4段階や6段階)にしたほうが、傾向がはっきり出るから好ましい」という考えもあります。主語がやや大きすぎる気もしますが、言いたいことはわかります。
一方で、「わからない」「どちらでもない」を入れないと、本当によく考えた上で「わからない」「どちらでもない」と判断した人の考えを尊重できない、という考えもあります。
私は当初、前者の考えに近かったのですが、自分が実際に調査をして分析をする経験をしてみると、やはり後者がよいのではないかと考えを変えました。つまり、「わからない」「どちらでもない」も、一つの態度であると考えています。
とはいえ、回答にできるだけ時間をかけずに終わらせたい、という気持ちから、適当に「どちらでもない」ばかりを選んでいく回答者が存在することも事実のようです。これに関しては専門的な研究がされています。
結局、「わからない」「どちらでもない」が、
- とりあえず適当に答えて早く終わらせたい
- 脳に汗をかいて考えたがどうしてもわからない
のどちらであるかを、回答だけからは判断できません。
「わからない」という態度
冒頭の記事に戻ります。重ね聞きをする方法では、「わからない」と答えると、「「お気持ちに近いのはどちらですか」と一度だけ重ねて質問」されるそうです。「あえて言うならどっちなのか」を考えてもらい、「わからない」という回答をできるだけ減らした方が、調査として良いだろう、という判断が背後にあるのかもしれません。全く違う判断があるのかもしれません。
しかし、「わからない」も一つの態度です。
- 政治の話題にまったく関心を持っていないので「わからない」
- 支持できる点もあるし支持できない点もあるから判断できない
- とにかく早く終わらせたいから、考えたくない
- 自分の態度を明示すると、誰かに何か言われそうだから、言いたくない
など、「わからない」の背後にはいろいろな考えがあるのだろうと思います。こういうのを丁寧にすくいあげていく調査も、求められるかもしれませんね。
とはいえ最頻値は「無回答」
とはいえ、電話を掛けて回答してくれるのは40%台、最近は4割を切ることも多いと記事には書かれています。回答してくれない方々(少なくとも電話をかけたうちの50%)が、どう判断しているのかは、知りようがありません。
回答率が低くなっているということが、「じゃあ、私も、掛かってきても断っていいんだな」という判断をもたらし、余計に回答率の低下を招いているようにも思えます。残念なことだと思います。