「アンケート」ウォッチング 2023年11月13日
Web上に散乱する「アンケート」が、より良質なものになるよう願っています。今回のネタはこちら。あまりにも残念なのでひとこと。
残念ポイント
記事のまとめを少しだけ引用すると、心の病が増加した、または横ばい、と答えた割合が合わせて90%らしいです。グラフでは増加と横ばいを分けているので、割合が上がったり下がったりしていますが、両方合わせて「少なくとも減ってはいない」が9割とみたほうがいいかもしれません。そのように見ていくと、「少なくとも減ってはいない」は、調査が行われている期間中、ずっと8割から9割であり続けていることになります。残念としかいいようがないですね。
もっと残念ポイント
と書いておきながら、それよりももっと残念なポイントがあります。心の病が少なくとも減ってはいない、という結果を吹き飛ばしてしまうほどに残念なのは、次の点です。
今回の調査は、7月7日から9月4日に郵送およびwebで実施し、上場企業169社の人事担当者から回答を得ました。
え? 169社? 上場企業がそんなに少ないわけはない。もちろんです。「調査結果概要」のPDFを見ると、調査対象は次の通り。
でもって、回収率は 169÷2847=0.0594(5.9%)です。なんと。統計局が行っている調査でさえ、回収率が下がっていることは以前から聞いていましたが、これは低すぎます。この調査は11回目ということなので、以前の調査ではどうだったのでしょう。日本生産性本部のサイトから、第3回の調査までは遡ることができました。結果は?
はい、こんな感じでした。もともと10%程度しかなかった回収率が、2021年に3%以上低下しています。残念としか言いようがありません。
最頻値が回答拒否という「残念」
というわけで、調査の最頻値はなんと「回答拒否」でした。94%という圧倒的多数です。これでは、心の病が増加したのか、減少したのか、この調査結果だけでは何もわからないと思います。「業務で忙しいのにアンケートに答えている時間などない」のでしょうか。気持ちはわからないではありません。でもねえ。
ほかの調査期間なり団体なりが、より精密な調査を行っていて、それが心の病への対応に生かされているのだろうと、願っています。調査対象になっていて回答しなかった企業、あるいは対象にならなかった企業の、心の病への対応努力と、その努力過程(必ずしも”成果”である必要はない)の公表や相互交流を期待したいと思います。