趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

街頭でシールアンケートに答えた経験、ありますか?

「アンケート」ウォッチング 2023年11月28日

今回のネタはこちらです。街頭で質問と選択肢をボードに書いて持ち、その場で自分の意見のところにシールを貼ってもらう、という方法です。時折、テレビの報道番組などで、「街の人の声をあつめてみました」とか言って、レポーターがシールの貼られたボードを掲げながら話しているのを見かけることがあります。みなさんは、こういうのに参加したことありますか?
なお、調査内容に関してのコメント(神宮外苑再開発に賛成か反対か)をする気はありません。
www.huffingtonpost.jp

良い点、悪い点

このような調査方法について、私が最初に思い浮かぶ良い点と悪い点は次の通りです。

結果がすぐわかる

結果が一目瞭然です。再開発に賛成か反対か、のボードでは見事に「反対」に意見が集中していますね。わかりやすい。(実際にシールの数を数えるのはそれなりに手間がかかる気がしますけど)

手軽に参加できる

いくら関心のある問題でも、アンケート用紙を渡されて「書いて郵送して下さいね」では回収率が下がりそうだし、「QRコード読み込んで回答してくださいね」でも、面倒に感じる人はいるでしょう。シールを貼るのは何といっても簡便です。

参加者間の独立性が担保されない

再開発に賛成か反対か、のボードを見た人は、どう考えるでしょう。まだ誰もシールを貼っていないなら、「どちらともいえない、が無難かな?」と考えるかもしれませんし、「反対」にたくさんシールが貼られているなら、「みんなと同じにしておこう」と考えるかもしれません。すでに回答された意見に影響される可能性が高いという点で、問題があります。

サンプルの偏り

当然ですが、その場を通りかかった人しか回答できません。神宮外苑で調査するということは、神宮外苑をよく利用する人が多い、と考えられ、その時点で回答に偏りが生じている可能性があります。

ChatGPT にまとめてもらいました

ChatGPT(3.5)に、さきほどの記事のリンクをつけて、このような方法の良い点、悪い点を整理してもらいました。次のようなことを返してくれました。同じ質問を3回ほど繰り返した結果から、私が気づかなかった点を中心に書きます。

リアルな対話の機会

街頭でのアンケートは、リアルな対話の機会を提供します。参加者との直接的なコミュニケーションが生まれ、意見や感情がより具体的に理解できます。

浅い意見表明

シールを貼る行為は簡略化されており、参加者が選択肢を深く理解しているかどうかが不透明です。そのため、意見が表面的で、本質的な理由や考えが把握しきれない可能性があります。

リアルタイムでの修正や改善の難しさ

アンケートが進行している最中に質問や選択肢に問題が発生した場合、リアルタイムで修正することが難しいです。デジタル手法と比較して柔軟性に欠ける場合があります。

「リアルな声」の一つとして活用したい

今回は、シールアンケートという手法について考えてみました。「リアルな対話の機会を提供」という点はとても興味深いものがあります。通常のアンケートでは得られない、参加者の感情に接したり、選択肢を選ぶだけでは伝えられない複雑な思いを受け取ることができるチャンスがある、ととらえると、質的調査の一つとして活用できそうです。