趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

3歳の七五三のお祝いをしてもらいましたか?(覚えてない…)

「アンケート」ウォッチング 2023年11月13日

Web上に散乱する「アンケート」が、より良質なものになるよう願っています。今回のネタはこちら。いったいどうやって調査をしたのかさっぱりわからない報告です。

www.agara.co.jp

調査協力者の属性は

いつものように、調査の設計を見ていきたいのですが、「保育施設探しをサポートする「えんさがそっ♪」のSNSより」としか書かれていないので、これ以上はわかりません。ですから、「全国の保護者に対して」を、通常の言葉通りに解釈してはいけません。

いったい何回調査したのか?

Webページには、4つの集計グラフが表示されていますが、とても不思議なのは、4つとも集計期間が同じなのに、対象者の人数が異なることです。ページ末尾にも、対象者は「子育て中の全国の保護者67~216名」とあり、これには「質問によって回答者数が異なる」と注が付いています。これはどういう意味ですか?

好意的に解釈すれば、たとえば、最初の質問「3歳の七五三をお祝いしますか」(回答216名)で「お祝いする」と回答した人に対して、2つ目の質問「七五三のお参りに行きますか」(回答130名)をした、ということかもしれません。

そうであるなら、対象者は「最初の質問でお祝いすると回答した130名」と書けばよいわけです。グラフには、単に「130名」としか書いてありません。また、文章も、「BABY JOBが全国の保護者130名にアンケート調査を行ったところ」と改めて書いてあります。え? 最初の216名とは違う対象者を、130名集め直したの? と思ってしまいます。

属性を明らかにしないのはなぜ?

もう少し書きます。

最初の質問に対して、「3歳で七五三のお祝いをするのは、女の子が94.1%であるのに対し、男の子は48.7%」と、子どもの性別によって、お祝いをするかどうかに差があることが強調されています。これ、本当なのでしょうか。

何を寝ぼけているのか! 数字を見たら差があることは一目瞭然なのに!

そう言われそうにも思いますが、「男の子(の保護者)」と「女の子(の保護者)」がそれぞれ何名なのかわかりません。極端な話、前者が16名で後者が200人かもしれません。お祝いの仕方に地域差があることはすでに述べられていますから、男の子の保護者に、たまたまお祝いをしない地域の人が多く、女の子の保護者に、たまたまお祝いをする地域の人が多いのかもしれません。

そんな都合のいいことがあるわけがない!

という声もまた聞こえそうですが、わからないものはわからないのです。だって「書いてない」のですから。

というわけで最初に指摘したことに戻りますと、もし、仮に、です。2つ目の質問に回答している130名が、3歳の七五三の「お祝いをする」と答えた人たちと同じ人たちであったら、男の子の保護者と女の子の保護者の割合は、(面倒ですが)計算できるわけです。(そんな面倒をさせる報告は、それはそれでひどいものですが。)

でも、書いてない。書いてないからわからない。

なんだかんだ言って、難癖付けてるだけじゃん!

そうかもしれませんね。でも、書くべきことはちゃんと書いてほしいです。都合の悪いことは書かなくていいことになってしまってはダメだと思うのです。