趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

2023年の年末、大掃除のご予定はありますか?

「アンケート」ウォッチング 2023年11月19日

今回のネタはこちらです。心理学を勉強した方なら、ああ、セルフハンディキャッピングの話、と思われるかもしれません。おそらくセルフハンディキャッピングの文脈で読むことができると思いますが、テスト勉強のときのそれと同じように解釈していいかどうかはよくわかりません。どなたかお詳しいですか? 教えてください。
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調査計画はいつものごとく

すでに複数回書いていますが、「インターネット調査」という書き方はまったく具体性のないものです。調査結果は、「まあそうだろうなあ」を思われる結論ですが、そうであっても、方法がきちんと書かれていないかぎりは、安易に一般化してはいけないと思います。ということで、ここに書かれていることは、調査に参加して下さった100名の結果(すなわち「記述統計」)であって、それ以上のものではありません。

質問の順番はこれでいいのか?

最初の質問の未回答100人?

読んでいてひっかかるのは、最初のグラフ「年末の大掃除いつから始める?」に「未回答100人は除く」と書かれていることです。記事のタイトルから、この調査は「人は大掃除を計画どおりにできるのか。」について疑問をもっていると(きわめて好意的な解釈ですが)思われますから、そもそも大掃除をするのか、するとしたらいつごろから始めるのか、予定している日数はどれくらいか、予定をどのように立てるのか(その日のことはその日に、あるいは大掃除の期間中の予定をすべてあらかじめ決める、など)、これらのことについて昨年はどうであったかなどが最初に調査されたうえで、「これまでの経験から、大掃除が計画的にできなかったことはありますか。」「計画的にできなかったときの理由はどんなことがありますか。」などが問われるのだろうと推測できます。
というようなことを考えた上で、「年末の大掃除いつから始める?」に「無回答」であるのはなぜでしょう? そもそも掃除をしない、まだ決めていない、毎日しているからする必要がない、など、さまざまな回答があると思うのですが、そうした回答はどこで拾い上げているのでしょう。この未回答の100人は、そのような回答をしたかったのではないでしょうか? もちろん、ただの憶測ですが。

2番目の質問はなぜ2番目?

そう思って2つ目をみると、「年末の大掃除やる?」です。びっくりです。どうしてこの質問が2番目なのでしょう。上に書いた「そもそも掃除をしない、まだ決めていない、毎日しているからする必要がない」などは、ここで回収できそうな回答です。
実際、このグラフの下にある解説には、そのような回答があったことが示唆されています。だったら、なぜその内容をちゃんと報告しないのでしょう。私にとっては、この質問の順番の方が、よほど「驚愕」でした。

興味の中心はどこにあるのか?

などということを考えてくると、調査者の興味の中心はどこにあるのか、を考え直したくなります。「人は大掃除を計画どおりにできるのか。」に興味がある前提でブログの最初の方を書きました。が、もしかしたら調査者は、「大掃除中に掃除をやめて何かしてしまうことがあるけど、何をやってしまっているのか」という回答にこそ興味があるだけなのかもしれない、と勘繰ってしまいます。

こまごましたこと

あと、細かいですが、3つ目のグラフはよくわかりません。見出しは「大掃除を予定通りに出来る人は2.7%」ですが、グラフのタイトルは「掃除中についやってしまうことがある?」です。何が言いたいかというと、「ついやってしまうことがある」なら、それは「予定通りではない」と解釈されているように読めますが、それでいいのか? ということです。「つい昔の写真を見なおしちゃったけど、だいたいその日の予定通り終わらせた」ということもあるでしょうし、「想定外の汚れがあって、がんばったけどその日の予定通りに終わらなかった」ということもあるでしょう。

質問文はこの通りなのか?

最後に、質問文について思っていることを書いておきます。
グラフのタイトルには、たとえば「年末の大掃除やる?」と書かれていますが、まさかこのままの表現で調査を実施しているわけではありませんよね?
実際のアンケートフォームには、たとえば「あなたのご家庭では、2023年の年末に、大掃除をなさいますか?」のように書くはずです。少なくとも、こういう表現をするのが「ふつう」だと私は思うのですが、違うのでしょうか?
もしそうだとしたら、なぜそのままの表現で書かないのでしょうか?
このことは、この調査だけでなく、多くの調査報告に感じていることです。