趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

習い事の月謝は、何で払いますか?(現金、電子マネー、クレジット・・・)

「アンケート」ウォッチング 2023年11月20日

今回のネタはこちらです。月謝に「お」がつくのも興味深いのですが、こういうことが「議論」になっていることも興味深いですね。
otakei.otakuma.net

調査方法の記述

今回の調査方法の記述はけっこう具体的です。「X(Twitter)、Instagramストーリーズにおけるアンケート機能にて」と記されています。集計期間が記載されていないので、「生徒側は約3400票、先生側は約1200票」がどれくらいの期間で集まったのかはわかりません。
このような方法、つまり「SNSに質問を投げる」方法には、さまざま問題があることが知られています。ChatGPTにそのあたりをまとめてもらいました。それによると、

  • サンプルが特定の傾向をもった人に限られる(XやInstagramを使っていない人はそもそも回答できないし、アンケート機能に気づかない場合も回答できない)
  • 強い意見を持つ人が回答し、中間的な意見の人が回答を避ける(ネット上の意見が極端な傾向に走りやすいのはこれが原因だと聞いたことがあります)
  • プライバシーやセキュリティに不安がある(個人が特定されるといやだ、という心配は理解します。調査側はほとんど関心を持っていないと思いますけどね)

こんなところでしょうか。また、SNSを多用する人と、オンライン決済を好む人はある程度相関するのではないかと考えられる(本当かどうか知りませんが、ChatGPTはそう言います)ので、現金以外の支払い方法を好む人が多く回答するかもしれないとも教えてくれました。(以上、ChatGPT 3.5 の回答をもとに)
付け加えると、アンケート機能を使用したアカウント名やフォロワー数なども記載されていると、どの程度のサンプルが抽出されたのかの参考になると思いました。

結果は?

生徒側で、「ピン札(あるいは現金)で支払いたい」人よりも、先生側で「ピン札(あるいは現金)で受け取りたい」人のほうが少ないという結果でした。比率で10ポイント以上違うので、少なくともこのサンプルの中では十分に大きい差のように見えます。
それと、先生側で「現金以外で受け取っている」人が3割いたことも注目ですね。そりゃそのほうが楽でしょうから(人によるでしょうけど)。

設問も書いてほしい

最後に、昨日のブログにも書きましたが、設問をきちんと書いてほしいと思います。記事には「設問と票数」として記載されていますが、書かれているのは「選択肢」であって、設問ではありません。
設問は、おそらく「バレエの月謝をどのように支払っていますか」などだと思われます。ただし、「バレエのお月謝は」と「お」をつけるのかどうか、「月謝をピン札ではらうべきだという意見がありますが」などの但し書きをつけるかどうかは、難しいと思います。
前者はどっちでもいいかもしれませが、後者は、社会調査の質問としてはアウトです。どうしてかというと、「月謝をピン札ではらうべきだという意見」が存在することを先に示してしまうと、そのことが回答に影響するからです。実際にどのように影響するかは難しいですが、この意見を知っているなら、「そうそう、知ってる。絶対そうだよね」と思ったり、この意見を知らないなら、「なにそれ。変なルール作ったねえ」と思ったりする可能性があります。それ以外にも、「へえ、そうなんだ。これからちゃんとピン札用意しなきゃ」と、自分の意見を答える前に態度を変えてしまう可能性もあります。いやあ、調査って難しいね。