趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

小中学生の頃、苦手な先生はいましたか?

「アンケート」ウォッチング 2023年11月11日

私は統計を趣味(≒下手の横好き)としていますが、Web上に散乱する「アンケート」には、残念なものも混じっています。良質な調査報告が増え、質の低い「アンケート」結果に惑わされる人が少なくなるように願っています。

今回のネタはこちら。

kids.nifty.com

まあそうでしょうね、という結果

冒頭で集計結果が述べられています。苦手な先生がいると回答した小中学生が8割以上いる、ということですね。まあ、そうでしょうね。お互い人間ですから、子どもが「この先生苦手だな」と思ったり、教員が「この子ちょっと苦手だな」と思ったりすることは、別段不思議なことではありません。

とはいえ。

属性集計に注目

冒頭では、約1400名から回答を得たとしか書かれていませんが、その属性に注目しなければいけません。記事の一番最後にそれが書かれています。注目したいのは、

  • 回答者の8割以上が女性であること。
  • 回答者の3分の2以上が、小学校5年生から中学校1年生であること。

の2点です。属性がこのように偏っているのは、採用している調査方法の影響だと思われます。

nifty kids サイト

属性集計のすぐ上に、nifty kids について紹介があり、小中学生を対象とした子どものためのサービス、と書かれています。サイトを訪れると、実施中のアンケートが数件表示されていて、このサイトを訪れると誰でも回答できるようです。

つまり、このサイトをよく利用しているのは、小学5年から中学1年までの女子児童生徒が中心であり、そのことが回答者属性によくあらわれていると見るのが妥当でしょう。

想定母集団は?

そう考えると、この調査の想定母集団は、「nifty kids サイトの利用者」ということになるのでしょうか。

そんなの当たり前じゃん? と思われそうですが、こうしたことを意識するのはそれなりに大事なことです。なぜか。

記事の冒頭に「8割以上の小中学生が」と書いてありますが、これを、「日本の小中学生の8割以上が」と読むのは妥当ではありません。想定母集団が「nifty kids サイトの利用者」であると考えられるので、「8割以上の小中学生が」は、「本サイトの利用者のうち8割以上が」と解釈するのが妥当だと思います。そして、こうしたことは、実は多くのアンケート調査にも共通することです。

では、「日本の小中学生」を母集団にしたとき、まったく異なった結果が出るのかというと、それはわかりません。案外似たような結果になるかもしれませんね。