趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

中学生のころから英検とか漢検とか、受けようと思ってましたか?

「アンケート」ウォッチング 2023年11月13日

Web上に散乱する「アンケート」が、より良質なものになるよう願っています。今回のネタはこちら。久々にひどいグラフ表現を見たので、我慢できず。

中学生が取得したい資格・検定、3位「TOEIC」、1位は? | マイナビニュース

調査協力者の属性は

いつものように調査設計を見ていきましょう。回答してくれたのは、

チャット型小説サービス「プリ小説 byGMO」を利用している中学生の男女747名

だそうです。どんなサービスなのか1.3ミリくらいは興味がありますが、調べている余裕がないのでスルーします。ご存知の方は教えてくださいね。

当然ですが、このサービスを知らない中学生は最初から調査対象に入っていないので、結果を全国の中学生に一般化するのは控えましょう。といいつつ、「だったらどうやって調べりゃいいんだよ!」という気持ちになるのもわかります。が、これも深入りしません。とてもブログに書ききれるような議論ではないように思います。

なんだこのグラフは

では、ひどいグラフを見てください。リンク先に記事にあるグラフはどれも似たような見た目をしています。グラフというのは、たくさんあるデータを整理してその特徴を把握しやすくするために描くものですが。

このグラフは、その目的を果たしているでしょうか。

私の答えは「否!」です。

グラフの一部を引用させていただきます。

受験したことがある資格・検定(グラフの一部)

グラフの横軸は0%~100%のメモリがあり、色は、濃い色から順に中学1年生、2年生、3年生です。このグラフについてのまとめの文章は、「どの学年においても英検を受験したことがある人が最も多い」です。これ、上のグラフから直感的にわかりますか? 私は分かりません。

数字みなさいよ! 数字見たら、英検が299票で、一番多いってわかるじゃないの! そういう声も聞こえそうです。

はい。その通りです。でも、数字を見てわかってほしいなら、数字で表を作ればいいのであって、グラフを作るのは、数字を見なくても、グラフの形状からその特徴が把握できるからです。上のグラフからわかるのは、たとえば英検を受験したことがある人は、中学1年生も2年生も3年生も、同じくらいの人数いるんだな。ということです。

普通はこうするのでは?

上のグラフに示されていた数字をお借りして、色の設定も似せて作ってみました(検定試験の名称は省略表記しています)。これなら、「なるほど、どの学年も英検が多くて、次が漢検だな。数学検定は3位だが、英検や漢検よりもだいぶ少ないな」とわかるでしょう。そう思いません?

私だったらこうすると思う

以上。こんなにひどいグラフに出会うとは思わなかったので、とても残念でした。

調査方法をなぜ「インターネット」ですますのか?

調査方法についてもついでに書いておきますと、「インターネットで実施」などの書き方では、何も説明したことになっていません。具体的にどんな方法なのか私は知りませんし、問い合わせるつもりもないのですが、「プリ小説 byGMO」というサービスを使っている中学生を対象にしているのであれば、「自社サイト内にアンケートフォームを設置」とか「サービス利用者に対して、チャットを通じて、アンケートへの協力を要請した」とか(実際はどうか知りません。私の勝手な妄想による記述の「例」です)くらいのことは書けると思います。どのように調査をしたのか、謝礼があったのか等を明らかにしておくことは重要なことだと、私は考えています。