趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

選択肢は偶数か、奇数か。

「アンケート」ウォッチング 2023年12月26日

今回のネタはこちらです。個人的にはあまり楽しくない話題なのですが、これまで何回かとりあげたことと関連があるので、その部分に注目して取り上げます。
www.mri.co.jp

調査概要

いつものごとく、「Webアンケート調査」と書かれているだけです。エリア別に600名ずつを抽出し、「人口構成比に合致するように、重みづけ(ウエイトバック)して集計しています」と書かれています。でも、報告されているのは相対度数(割合)だけなので、ウェイトバックする必要があるのかどうかはわかりません。
2022年7月の同調査の報告では、「WEBアンケート調査(「生活者市場予測システム(mif)」を利用)」と報告されているので、その後の調査(2023年6月、および12月に公表)でも同じシステムを利用していると考えるのが妥当だろうと思います。どうして報告から削除されているのかは謎です。

どうして離れた場所に、小さい字で

気になるのは、ここです。調査結果のポイント最初、「(1) 認知度」のグラフの説明の冒頭に次の文章があります。

大阪・関西万博に対する認知度※1は、全国で上昇傾向。

こういうのを読むと、かならず「認知度」ってどうやって聞いたの? 質問文と選択肢は? と気になってほしいのです。読んでいる人はみんな気にしてほしい。で、「認知度※1」とあります。「※1」の部分は上付き文字になっていて、小さい字です。なるほど説明があるのね、と理解しますが、リンクが貼られているわけではありません。説明はどこですか? と探してみると、なんと記事の下の方、調査概要のすぐ上に、やっぱり小さい字で書いてありました。「認知度」とは、

2025年に大阪・関西万博が開催されることについて、「知っている」を選択した人の割合

だそうです。ふむ。
いえ、ここで納得してはいけません。他の選択肢はなんなんでしょう? 「知っている」と「知らない」の2択なのでしょうか?
だいたいそうなんじゃないの~、細かいこと気にしてないで、先にすすもー。
とか言いたくなりますが、気にします。
差し当たり、「認知度」って何さ? という疑問に対しては、グラフの中や、解説文の中に記載してくれてもいいのでは、と思います。わざわざスクロールしないと見られないのは不親切です。

偶数か奇数か。それは問題だ。

次の設問は「関心度」です。さきほどの設問と同じく、次の説明があります。

大阪・関西万博に対する関心度※2は、全国で低下。

がんばってスクロールして「※2」を見つけると、こう書いてあります。

2025年に大阪・関西万博への関心について、「大いに関心がある」「まあ関心がある」を選択した人の割合

はい、みなさん、お待たせしました。問題はここですね。この設問には「どちらでもない」「わからない」という選択肢があるのでしょうか、ないのでしょうか。偶数なのか、奇数なのか。どっちなんだーい。
前回(たぶん)にも書いたように、中間的な選択肢(どちらでもない、等)がない場合(つまり偶数の場合)、明確な意見をもたない回答者は、「まあ関心がある」あるいは「あまり関心がない」(という選択肢がきっとあると予想される)のどちらかを選択することになります。どちらが選択されるかはわかりませんが、「まあ関心がある」「あまり関心がない」が半々の確率で選ばれたとしても、結果としては、肯定的回答の比率が少しだけ上昇することになります。選択肢が偶数の場合の方が、傾向がはっきり出やすいというのは、こういうことですね。

どうして質問文や選択肢を見せないのか

さて、どうして、この記事では選択肢を見せないのでしょう。必要ないと考えているのでしょうか。選択肢を示すことは必要ない? そんなことはないですね。
それから、どうして万博に関して、これまで6回も調査をしているのでしょう。報告の冒頭には、

今回の調査では、万博開催におけるさまざまな課題が注目されるなか、万博の開催意義や内容を伝えていくための施策を検討しました。

と書かれています。この書き方から考えると、「さまざまな課題」に対してどのように認知されているのか、「意義や内容」がどの程度理解されているのか、調査されていると思うのですが、どうしてその内容は伝えられていないのでしょう。認知度や関心度だけ知らされても、「そんなことより、ね!」と思う読者も多いのではないでしょうか。