趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

ライドシェア、使ったことはありますか?

「アンケート」ウォッチング 2023年11月21日

今回のネタはこちらです。記事を2つ貼り付けます。もとになっている調査は同一で、一方は調査会社(MM総研)が自ら発表しているもの、もう一方はそれをもとに新聞社が報じているものです。タイトルの付け方に、新聞社の意見が表れているという、たいへんわかりやすい事例かと思います。
(筆者はこの記事において、ライドシェアの導入に賛成も反対もしておりません。)
www.m2ri.jp
www.hokkoku.co.jp

「独立性の検定」をしてみよう

この調査で注目したいのは、ライドシェア導入への態度が、海外でのサービス利用経験の有無によってかなり違うようだ、ということです。北國新聞の記事では、記事を最後まで注意深く読んでいくとそのことがわかりますが、より明瞭に伝えているのはやはりMM総研のほうでしょう。
ここで、「いやあ、利用経験ありの方はさあ、人数少ないから、比べる意味ないんじゃない?」と感じる方もおられるでしょう。そういうときに使うのが、「独立性の検定」です。

検定の準備:クロス表を作ります

全体で見ると、「反対」「どちらかというと反対」(以後、両者を合わせて「否定的意見」とします)が約60%でした。利用経験の有無で分けたときにも、やはり否定的意見が60%程度であれば、「利用経験で分ける意味なんかない」わけです。しかし、今回の場合は、利用経験ありでは、否定的意見が約16%、利用経験なしでは、否定的意見が約65%と大きく差があります。これが、たまたまこうだったのか、あるいは統計的にも差があるのかを考えるためのツールが、独立性の検定です。計算を単純にするために、次のようにまとめます。(カッコ内はnと割合から算出した人数)

利用経験 肯定的意見 否定的意見
なし(n=2780) 35.6%(990) 64.4%(1790)
あり(n=220) 84.1%(185) 15.9%(35)

検定結果はいかに。

では、検定してみましょう。使用ツールはHAD18です。

検定結果は、0.1%水準で帰無仮説が棄却されていますので、このサンプルが母集団(日本人全体と考えていいのかな?)からの無作為抽出であると考えられるならば、母集団においても、海外でのライドシェアの利用経験の有無で、ライドシェア導入に対する態度は異なるだろう(経験ありのほうが、導入に肯定的であろう)と結論できます。クラメールの連関係数は0.259と、それほど大きな値ではありませんが、nが大きいためか、95%信頼区間はかなり小さめでした。連関はそれほど強いとは言えませんが、確かに連関がありそうだといっていいでしょう。
さて、長くなったのでここまでにしましょう。もっとも影響の大きそうな、タクシー運転手、それ以外のプロのドライバー、一般のドライバー、といった人々と、それ以外の人々の比較にも興味がありますね。