趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

選択肢って難しい。

「アンケート」ウォッチング 2023年11月29日

今回のネタはこちらです。並列帯グラフの層別に使われている選択肢が、わりと悩ましいと思うのですが、そんなことを気にするのは私だけかなあ?
www.jiji.com

「多すぎる」は肯定的意味合いなのか?

「ポイント1」で取り上げられているグラフを見てください。「ポジティブフィードバックが多いほど、創意工夫を「いつも意識している」という新入社員の割合が高くなりました」と解説されています。たしかに、並列帯グラフの上の方が、「ポジティブフィードバック」の頻度が高い、下の方が低い、と解釈すれば、解説されているとおりのきれいな結果です。
でも。
帯グラフを層別している選択肢表現をみて、私はモヤモヤします。
「多すぎるーやや多いー適当であるーやや少ないー少なすぎる」という選択肢の並びです。
別に、普通じゃん? どこにモヤモヤするん? と思われますか?
いえ、これね、中央の選択肢が「適当である」となっていますよね。この「適当」は、もちろん、いい加減であるという意味ではなく、「適切な頻度である」という意味でしょう。そして両端が「多すぎる」「少なすぎる」となっています。だとしたら、これは「多すぎて迷惑」「少なすぎて不満」という、ネガティブな意味をもっているのではないですか? 「過ぎたるは及ばざるがごとし」って言いますからね。
そう考えると、「多すぎる」で、創意工夫を「いつも意識している」は、「たしかにポジティブフィードバック多いけど、多すぎてうざったいから、こっちも工夫せざるを得ないんだよね。やれやれ」みたいに読めてしまう。考えすぎかなあ?
「多すぎるけどこのくらいが快適」という人もいるでしょう。逆に、「少なすぎるけど、あんまり多くされてもうざい」という人もいるかもしれません。
つまり、何が言いたいかというと、フィードバックの「頻度」と、その頻度に対する「主観的な受け止め」とは、必ずしも相関しないよね、ということを言いたいのです。

満足度だけを調査すれば?

じゃあどうするん? ということですが、私は、「満足度」だけを調査すればいいのではないかと思います。
「フィードバックの頻度や質について、どのくらい満足していますか」「満足しているーやや満足しているーどちらともいえないーあまり満足していないー満足していない」
このように尋ねた後で、主に不満足側の意見として、「もっとポジティブフィードバックを多くして」「ネガティブフィードバックが多すぎて困る」「いつもポジティブに返してくれるのはいいけど、ちょっとうざい」みたいな回答が返ってくると、より生の声がわかるのではないかな、と思っています。新入社員の教育現場をしらない素人の意見ですから、的外れは承知の上ですけどね。

n書いてほしいなあ

この記事は、調査レポートの抜粋と言うことなので、レポート本文には書いてあるかもしれませんが、nを書いてほしいです。
「有効回答数744って書いてあるぞ!」
はい、たしかにそうですが、並列帯グラフを使うなら、「多すぎる」「やや多すぎる」・・・のそれぞれについて、nを書くべきだと思います。記事にある通りに、ポジティブフィードバックが多いことと、創意工夫を意識していることが、たしかに関連するのかもしれませんが、ポジティブフィードバックが「多すぎる」「やや多い」のnが(全体n=744の中で)比較的少ないのだとしたら、あまり強い主張にはなりませんよね。納得のできる主張をするために、層別のnは必須だと思いますが、いかが。