趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

しんりがく=しん+りがく=心+理学(≠心理+学)

心理統計をもういちど 2023年11月27日

いきなりわけのわからないタイトルで書き始めてしまいました。
「心理学」という語を聞いたことがある人はそれなりに多いように思いますが、この語は、どこで区切って理解するのが妥当であるか、という話を、かなり以前に何かの本で読んだ記憶があります。それが、どなたの、なんという本なのかまったく記憶にないのですが、とにかく、書かれていたことにびっくりした記憶だけはあります。
それとまったく同じことが、前回紹介した小杉先生の本にも書かれていました。
「心理学」はどこで区切って理解するのでしょう。小杉先生の解説を引用します。

正解は「しん/りがく」です。心の理学,つまり「こころの理(ことわり)」についての学が心理学なのです。

私がずっと以前、何かの本で読んだときには、さらに、「”心理”という、何か"ふわっとしたもの"を研究しているのではない」という趣旨のことまで書かれていました。ということで、タイトルに戻ります。
心理学は、「心理」を研究するのではない。「心」の「理」を研究するのである。
「理(ことわり)」は日常的には使う機会が少ないかもしれません。広辞苑には「道理、条理」、新明解には「そうなるべき物事の道理(筋道)」などの語釈が記されています。
よく似た言葉に「物理学」がありますね。これは「物の理」の学、ということになるでしょう。大きく違うのは、物理学が、目に見える、手で持てる対象を研究することが多いのに対し、心理学は対称が目に見えない(そもそも仮説でしかない)ことでしょう。

「学」として知見を積み重ねるために

小杉先生の解説は次のように続きます。ふたたび引用します。

「学」ですから,エンターテインメントや怪しげな術ではなく,知識の体系であるというのが大前提です。そして知識の体系とは,「積み重ねることができるもの」であり「誰にでも共有できるもの」でなければなりません。

この「誰にでも共有できるもの」という部分はたいへん重要で、「占い」などとの決定的な違いはここにあるといっていいと思います。したがって、たとえば「心理テスト」などの類は、学問としての心理学ではない、ということでしょう。

心理テストで何が分かる

心理テストなるものを見てみると、「いらない荷物をどうする?」とか、「唐揚げセット何から食べる」とかの質問があり、4つの選択肢から(どうして4つなのかにも興味がありますが)何かを選ばせて、あなたは**タイプ、のように、お告げ?をしているようです。
心理学のモデルに当てはめれば「質問→(心)→選択肢」ということになるのでしょう。けれど、そうであるなら、(心)の部分がどのようなメカニズムなのかを、実証的に示していく必要があります。ですからたとえば、唐揚げセットの唐揚げを最初に食べる人は、他の人と比較して「好きになったら突っ走る」傾向があるのだ、ということを研究した論文がどこかにあるのでしょうか。ぜひとも、「心理テスト」のページに参考文献として示していただきたいと思います。


初回から統計らしい話がすっとんでしまいましたが、「しん/りがく」の話が懐かしかったので、つい。