趣味の統計

心理統計のはなし(偏差への偏愛ともいう)。Web上に散らばっている「アンケート」へのつっこみ。その他。

理解の助けになる「イメージ」の難しさについて

読書記録 2024年1月3日

今回の書籍はこちらです。
www.hanmoto.com
無料サンプルで読める「はじめに」の中で著者は、統計は3つの理解の仕方があると言っています。引用すると、

1. 数式による理解
2. 文章による理解
3. イメージによる理解

これらが具体的にどのようなものかが、「平均値と分散」を例に説明されています。数式による説明は、このブログでもたびたび登場している、いまわしき総和記号( \sum)が登場する、アレですね。
文章による説明は、この計算過程が言葉でえんえんと語られています。引用する気になれないのでしませんけど、これは「文章による理解」なのか? というのが率直な疑問でした。私の感覚では、これは「文章による数式の書き下し」であって、説明にはなっていないのではないかと思うのです。とはいえ、これはおいといて。
さて、期待していた「イメージ」による説明です。図を引用しましょう。

これは「直感的に理解しやすい」のでしょうか? 残念ながら、私にはそう思えません。
いえ、「こういうのが欲しかった!」という人がいらっしゃるだろうとは思います。「なるほど、これならわかる」と感じる方がいらっしゃることは理解します。だけど、私が目指す方向とは違うな、ということです。

イメージによる「理解」か「説明」か

書きながら気づいたのですが、著者は「イメージによる理解」をすすめているのであって、「イメージによる説明」を試みているのではないのかもしれません。さきほどの図のタイトルも、「イメージによる理解」となっています。なので、「著者である私の頭の中では、このようなイメージとして理解されている」ことを提示しているとも読み取れます。なるほど、それならわかります。
ということは、著者が提示しているイメージを参考にして、「自分なりのイメージを作って理解してね」というのが、著者の本当のメッセージなのかもしれません。いやあ、でも、それって道のりが長すぎませんかね?

私の考える「イメージ」

私の考える、統計の理解を助ける「イメージ」は、前回の記事で出した「偏差値可視化ツール」みたいなやつです。確率変数の挙動をアニメーションにしたものも作成しています(いずれこちらでもご紹介します)。アニメーションにするには、多少精密さを犠牲にせざるをえないのですが、正確な説明を学ぶ、アニメーションなどのイメージ教材を見てみる、手を動かして(小さいデータで)計算してみる、他の教科書の説明や図を見てみる、などを「繰り返す」ことで、徐々に理解を正確なものに近づけていくことが、結局、一番よいのではないかと思います。
道のり長すぎるぞ。
そうですね。長いです。私は、「分散」ってそういうものなんだ、ということが一段階腹落ちするまでに何年かかったか。
だから、そんなんじゃ間にあわないんだよ!という方のために、いろいろと工夫をご提供したいとは思うのです。

とはいえ、この本は、「イメージによる理解」「イメージによる説明」としてどのようなものがより良いのかについて、考えるための資料にしたいと思い、Kindleで購入しました。
また、さきに紹介したような、「四角と矢印で構成された図」がお好きな方には、案外お役に立つかもしれないな、と思ってご紹介しています。どなたかのお役に立てば幸いです。